「今, 江戸が面白い!」のテーマで講演させていただきました。

10月15日,千葉県内のとある任意団体よりご依頼いただき,「今,江戸が面白い!」というテーマにてお話しさせていただきました。
コロナウイルス感染拡大の影響を受け,人が集まることが制限されるようになって以来,実に久しぶりの講演でした。

熈代勝覧(きだいしょうらん)の一部分

当日は冷たい雨の降るあいにくの空模様。夜19時開演にも関わらず,行政書士,税理士,社会保険労務士,弁護士,会社経営者,県会議員,参議院議員秘書・・・多彩な皆様にお集まりいただきました。
大きく頷いたり,驚かれたり,参加者の皆様が素晴らしいリアクションを返してくださったおかげで,実に話し甲斐のある,幸せな1時間となりました。何より皆様が口々に「楽しかった!」とおっしゃってくださったことが,最大の喜びです。

お集まりくださった30名あまりもの皆様,本当にありがとうございました。

今回のテーマは,私たちが江戸に忘れてきたもの。

思えば,現代の我々が,「お上」の手で法制化されてやっと手に入れようとしているものが,200年前の江戸には当たり前に存在していました。
資源循環型社会。多様な働き方。教育の機会の平等。

それらを,1999年にベルリンの美術館で発見された絵巻物・熈代勝覧(きだいしょうらん)と,幕末の江戸を訪れた外国人が書き残した旅行記をもとにお話ししました。

幕末の日本を訪れたあらゆる外国人が,日本人の識字率の高さに驚いたことは,様々な機会にご紹介しています。
ドイツ人商人ハインリッヒ・シュリーマンもその一人。日本で当時のヨーロッパのどの国よりも教育が普及しており,特に女子が男子と同じように読み書きができることを高く称賛しています。

江戸では,6歳ぐらいに手習い師匠に入門したと言います。
子どもたちが,先生のお話をそっちのけで,外国人の見学者に手を振ったり笑いかけてくる様子が,英国人植物学者ロバート・フォーチュンの紀行文に記されています。

そんな幕末・明治初期と思われる寺子屋の様子が,外国人が写した写真に残っていました。

外国人が写真を撮りに来ると言われていたのでしょう,先生こそ裃を着用してあらたまっていますが,一方の子どもたちは,もうむちゃくちゃ(笑)
寝る子,遊ぶ子はおろか,柱にまで登り始める始末。いまなら学級崩壊のレッテルを貼られそうなレベル。
こんな中でも,3年も学べば,ひらがなの読み書き,多少の漢字の読み書き,年貢をごまかされない程度の計算力が身についたといいます。
そしてそれらが彼らの強く明るい足腰となって,日本は開国という大海に漕ぎ出したのです。

さて,最初の絵に戻ります。熈代勝覧(きだいしょうらん)の一部分。
中央に,机を担いだお父さんに手を引かれてぐずる子どもがいることに気づきます。
この子は今日,手習い師匠に入門します。
彼のその後の人生が幸せなものであったことを,私は少しも疑いません。

ひとりでも多くの外国人学習者に「ことば」という力強い足腰を。
TERAKOYA NIPPON PROJECTの取組みに,これからも皆様のご支援をどうぞ宜しくお願い申し上げます。